佐奈田霊社の額

江戸消防記念会の高橋様より、写真と資料をご提供いただきました。

佐奈田霊社は小田原市石橋にあり、佐奈田与一義忠をお祀りしています。

1180年(治承4年)、石橋山の合戦で源頼朝の先陣として戦いました。

一説には与一の声が出ず、味方が駆けつけられず25歳の若さで討死したとあります。

その霊魂が残り、のど(声)、せき、喘息等に悩む人々を救う信仰をあつめているそうです。

 

こちらにお参りに来る方は『喉が弱いから強くしてください』『喘息だから治してください』

『頼朝は挙兵をした後に天下を取った。だから私の商売でも天下を取れるように』とお参りに来られます。

鳶職の方は、いい声で木遣が唄えるように、そして一年間事故もないようにと祈願に来られます。

江戸時代あたりから鳶職、火消しが、力を合わせる為の木遣唄っていうのがあります。「小田原に木遣の神様あり」という評判があって、小田原に行けばついでに温泉に入れるという話になるんですね。

道了尊に鳶職の額がたくさんあります。そういう人達はここに来てもこのような額を奉納しました。だけど一番の目的は息抜きでしょうね。

鳶の人達が来たら必ずここで木遣を奉納します。伴纏着て奉納する。なんとも粋じゃないですか。

この間、この阿弥陀様の法要をやったんです。その時は東京から鳶の方が来られました。皆さん椅子に座って鳶の頭(かしら)が御奉納している時に、私は正式に着替えてね、スーっと入って来て壇にあがるとか、なかなかいいもんですよ。

鳶の方が額を奉納するとき、昔は小田原駅から木遣を唄って纏を振りながらここまであるいてきたものです。

(佐奈田霊社山主 原 義照様「美声を欲せんとすれば佐奈田飴」(小田原史談 2013年10月発行)より引用)

 

 

鳶職以外にも、そろばん塾の先生、ヒット祈願の歌手、役者など、声を使う人々がお参りに来られるそうです。